これはIT業界で働いている30代向けの話だ。未経験からIT業界に飛び込みたい人向けの内容じゃない。SES・受託・社内SEとして働いてきて、「そろそろ次のステージへ」と考え始めた人に向けて書く。
日曜の夜、スマホの求人アプリをスクロールしながら「こんな会社、本当にあるのか?」と半信半疑になった経験はないか。自社開発の求人を見ては「スタックが違いすぎる」「経験年数が足りない」「年収レンジが曖昧すぎる」と感じて閉じ、また別の求人を開く。その繰り返し。寝ようとしても眠れなくて、結局翌朝も同じ会社に出勤する。
俺も同じだった。転職を4回経験して、そのうち最初の2回は完全に失敗した。1回目は年収が50万円下がり、人間関係が最悪な職場に転職した。2回目はエージェントに「100万アップできる」と言われて飛びついたら、入社半年で部署ごとリストラされた。笑えない話だが、全部本当のことだ。
その失敗から学び、今はキャリアコンサルタントをしている。毎日、30代のIT人材の転職相談に乗っている。そこで気づいたことがある。転職に失敗する人と成功する人の差は、能力でも運でもなく「エージェントの使い方」にある。
この記事では、以下のことをまとめて伝える。
- 30代のIT転職市場の実情(エージェント選びで年収に100〜200万の差が出る理由)
- 30代前半・後半で必要なエージェントが変わる理由と具体的な戦略
- IT特化型×総合型の「2〜3社併用」が最適解である根拠
- SES・受託からの「軸ずらし転職」の具体的なパターン
- 初回面談前にやるべき職務経歴書の準備と、エージェントを使いこなす7ステップ
長くなるが、最後まで読んでくれ。お前の転職の成否を分ける話をする。
30代のIT転職市場は「売り手市場」だがエージェントで年収が100万変わる
まず現実の話から始めよう。30代のIT人材は、転職市場では基本的に「売り手市場」だ。DX推進・クラウド化・AI活用の波で、エンジニアやITスペシャリストの需要は年々上がっている。求人数だけ見れば、「30代は転職が難しい」なんて話はIT業界においてはほぼ当てはまらない。
だが、ここに落とし穴がある。
同じスキルセット・同じ経歴でも、使うエージェントによって提示される求人の年収レンジに100〜200万の差が出る。
これはIT業界の構造的な問題だ。総合型の大手エージェントは求人数こそ多いが、IT職種の細分化に対応しきれていないケースがある。例えば、インフラエンジニアとバックエンドエンジニアの違い、SRE・DevOpsエンジニアとサーバーエンジニアの実態の違い、PdMとPMの役割の違いなどがある。こうした点を正確に把握したうえで求人をマッチングできるかどうかは、エージェントの専門性に大きく依存する。

どこのエージェントでも同じ求人が出てるんじゃないの?大手に登録しておけば安心かと思ってた。



技術スタックや開発体制まで把握してるかどうかで、提示してくる求人の質がまるで違う。大手に登録した結果、年収500万円の求人ばかり紹介された人が、IT特化型に切り替えた途端、650万〜700万円の求人が並んだ。そんな話はよくある。
IT特化型エージェントが強い理由
IT特化型エージェント(レバテックキャリア、Geekly、マイナビITエージェントなど)の強みは、企業の開発体制・技術スタック・評価制度まで把握したうえで求人を紹介できる点にある。
例えば「自社開発企業で、ReactとGoを使っていて、スクラム開発をやっている、リモートワーク可、CTO直下の少人数チームで意思決定が速い企業」——こういった条件でマッチングできるのは、IT業界の現場を熟知したエージェントだけだ。総合型エージェントのキャリアアドバイザーは転職全般に詳しいが、技術領域の深掘りには限界がある。
IT特化型エージェントは書類通過率・内定率についても、IT職種では総合型より高い傾向がある。担当者がIT業界の採用基準を熟知しているため、「この経歴なら、この企業の書類選考を通過するかどうか」の見極め精度が違う。
総合型エージェントを無視できない理由
とはいえ、IT特化型だけに絞るのも間違いだ。
事業会社の社内SE・IT企画・情報システム部門の求人は、リクルートエージェントやdodaといった総合型エージェントの方が圧倒的に多い。事業会社はIT専門の採用チャンネルを持たず、総合型エージェントに求人を預けているケースが多いからだ。「受託から事業会社の社内SEに転向したい」という人が、IT特化型だけに登録していると、この求人群が丸ごと見えなくなる。
さらに、総合型エージェントは年収交渉の「比較材料」としても機能する。IT特化型から600万の求人オファーを持ちながら、総合型エージェントに「別のエージェントから600万の話がある」と伝えることで、上振れを狙える。この交渉力は複数登録してこそ生まれるものだ。
30代前半と後半でエージェントに求めるものがまったく違う
「30代の転職」と一括りにするのは乱暴だ。30歳と38歳じゃ、市場での立ち位置も、エージェントに求めるサポートの中身も、全然違う。
30代前半(30〜34歳)は、キャリアの「分岐点」にいる。IC(Individual Contributor:個人として技術で貢献するエンジニア)としてさらに専門性を深めるか、マネジメントやテックリードに転向するか、この2つの方向性が見えてくる時期だ。どちらに進むかによって、求めるべき求人の種類も、エージェントへのオーダーも変わってくる。
30代後半(35〜39歳)はどうか。「35歳の壁」という言葉が独り歩きしていて、35歳を超えると転職が一気に難しくなるかのような印象がある。実態はそうじゃない。



35歳の壁って本当にあるんですか?なんか煽られてる気がして…。実際のところどうなんでしょう。



「壁」じゃなくて”分岐”だ。35歳以降は求人の種類が変わる——開発実務のポジションより、マネジメント・テックリード・設計寄りのポジションが多くなる。需要がなくなるわけじゃない。ただ、「求められる役割」が変わる分岐点だ。
30代前半のエージェント活用戦略
30代前半でエージェントを活用するなら、「キャリアパスの選択肢を広げる提案力」を持つエージェントを選ぶことが重要だ。
具体的には、初回面談で「ICとしてスキルを深める方向と、マネジメントに転向する方向の両方の求人を見せてくれ」とオーダーできるエージェントがいい。一方向の求人しか提示してこないエージェントは、そこで担当変更を申し出るべきだ。
技術的なキャリアを深めたいなら、「自社開発企業・スタートアップ・テック企業で開発実務経験が積める環境」を求人条件に入れる。マネジメント転向を視野に入れるなら、「チームリード経験が積める」「採用にも関われる」ポジションを優先する。この方向性をエージェントに明確に伝えることで、的外れな求人を大量に送りつけられる事態を防げる。
30代後半のエージェント活用戦略
35歳以降は、一般公開求人だけでは選択肢が狭くなってくるのが実態だ。管理職ポジション・テックリード・CTOに近いポジション・テクニカルアーキテクトなどのハイクラス求人は、エージェントを通じた非公開求人として流通する割合が高い。
30代後半の転職では、通常のIT特化型・総合型エージェントに加えて、ビズリーチやJACリクルートメントのようなハイクラス・エグゼクティブ向けサービスの活用を検討すべきだ。これらのサービスは年収800万〜1,500万クラスの非公開求人を多く持っており、一般的なエージェントでは見えない世界がある。
ただし、ハイクラス系サービスは「自分の市場価値の棚卸し」ができていないと、面談でも求人紹介の精度が落ちる。「このスペックなら年収XXX万の求人を紹介できる」という判断をエージェント側がするからだ。職務経歴書を研ぎ澄ませてから臨むことが前提になる。
IT特化型×総合型の「2〜3社併用」が最適解の理由
「複数のエージェントに登録すると管理が大変」と思っている人は多い。でも考えてみてくれ。医者の診断を1人だけに聞いて、その通りに手術を受けるだろうか。普通は複数の専門家の意見を聞いて判断する。転職も同じだ。
1社だけのエージェントに頼ると、3つの問題が起きる。
- 比較対象がないため、提示された条件を鵜呑みにしやすい:「年収620万円」という提示が、相場として高いのか低いのかは、1社しか見ていないと判断できない
- そのエージェントの都合で求人が偏る:エージェントには、自社が手数料を得られる企業の求人を優先して紹介しやすい事情がある
- 年収交渉力がゼロになる:「他のエージェントからは680万円の話がある」と言えないと、上振れ交渉の材料が持てない



複数登録ってスカウトメールが大量に来てカオスにならない?全部管理するのめんどくさそう。



転職活動専用のメールアドレスを一つ作るだけで解決するよ。Gmailを新規で作って、エージェント登録はそこに集約する。混在させなければ管理は全然大変じゃない。
IT特化型エージェントの得意領域まとめ
主要なIT特化型エージェントの特徴を整理する。
| エージェント名 | 得意な職種・領域 | 年収帯の目安 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| レバテックキャリア | エンジニア全般、インフラ、バックエンド、フロントエンド | 500〜1,000万 | IT専門特化。技術理解が深く、開発環境・スタックの詳細情報が豊富 |
| Geekly | エンジニア・デザイナー・ゲーム業界 | 450〜900万 | スタートアップ・IT企業の求人が多い。エンジニアとデザイナーに特化 |
| マイナビITエージェント | ITエンジニア・SE・PG全般 | 400〜750万 | 中堅・大手IT企業の求人が充実。初回面談のサポートが丁寧 |
| ビズリーチ(ハイクラス) | シニアエンジニア・テックリード・CTO・PM | 700万〜 | スカウト型。30代後半〜40代のハイクラス転職に強い。非公開求人が多い |
総合型エージェントの得意領域まとめ
| エージェント名 | 得意な領域 | IT職種での強み | 特徴 |
|---|---|---|---|
| リクルートエージェント | 全業種・全職種(業界最大規模) | 事業会社の社内SE・情報システム求人が多い | 求人数最大級。非公開求人の比率も高い |
| doda | 全業種・全職種 | IT企画・PMO・IT営業の求人が豊富 | サイトとエージェント両方使える。スカウト機能あり |
2〜3社の組み合わせパターン例
状況別の組み合わせを提案する。
- SES→自社開発を狙う30代前半:レバテックキャリア(IT特化)+リクルートエージェント(事業会社求人)の2社
- 受託→事業会社を狙う30代前半:マイナビITエージェント(IT特化)+doda(事業会社のIT企画・PdM求人)の2社
- ハイクラスを狙う30代後半:レバテックキャリア(IT特化)+リクルートエージェント(総合)+ビズリーチ(ハイクラス)の3社
複数登録する際は、同時に登録する。転職活動期間中は2〜3社と並行して動くことで、求人の比較・年収交渉の材料・選考の時間的な余裕を確保できる。「登録は3社まで」を目安にするのは、それ以上になると管理が難しくなり、むしろ対応が雑になるからだ。
「もう少し経験を積んでから」は30代IT人材の最大の機会損失
転職相談に来る30代のエンジニアに「なぜ今まで転職活動をしなかったんですか?」と聞くと、一番多い答えが「もう少し経験を積んでから転職しようと思っていた」だ。
気持ちはわかる。俺も同じことをやった。2回目の転職失敗の後、「もっとスキルを磨いてから動こう」と決めた。そしてその1年間で何が起きたかというと、自分が磨いていたスキルが市場で急速に陳腐化し始めていた。
IT業界の技術トレンドは他の業界と比べて変化の速度が圧倒的に速い。「あと1〜2年経験を積んでから」と思っている間に、クラウドネイティブ・コンテナ・AI/ML関連のスキルを持つエンジニアの需要がどんどん上がる一方で、オンプレ専業・レガシー言語のポジションの単価が頭打ちになっていく。
技術トレンドと市場価値の関係
求人データを見ると、クラウド(AWS・GCP・Azure)・Kubernetes・CI/CD・MLOps関連のスキルを持つエンジニアへの需要は2020年から2025年にかけて継続的に増加している。一方、オンプレ専業・COBOLなどのレガシー技術は求人数自体はまだあるが、提示される年収レンジが頭打ちになる傾向が見られる。
「経験を積む」と「市場価値が上がる」は必ずしも同じじゃない。同じ会社で同じ技術スタックを使い続けていると、経験年数は積み上がっても、市場での評価が上がらないことがある。むしろ相対的に下がっていく事態も起きる。



「まだ早い」と思ってる間に、市場の技術トレンドだけが先に進む。エージェント面談は転職を確定させる行為じゃない。今の自分の値段を知るだけでいい。無料だ。拒否する理由がない。
転職相談は「転職を決める行為」ではない
エージェントへの登録・初回面談を「転職を決めること」と思っている人は多い。違う。エージェント面談は「自分の市場価値を無料で査定してもらう機会」だ。
面談で聞けることは、「今の自分の経歴で、どのくらいの年収の求人がどれだけあるか」「今後3〜5年でどのスキルを足すと市場価値が上がるか」「SES経験を自社開発企業はどう評価するか」といった、ネットでは絶対に手に入らない情報だ。
面談した後に「やっぱりもう少し今の会社で経験を積もう」と判断してもいい。でもその判断は、市場の実態を知った上でする判断だ。何も知らずに「まだ早い」と言い続けるのとは全然違う。
さらに言えば、エージェント面談で知った自分の市場価値は、現職での年収交渉にも使える。「市場では自分のスキルは年収650万相当と評価された。現職の600万は相場より低い」というファクトを持てば、上司との交渉カードになる。
初回面談の準備が転職成否の8割を決める
転職エージェントに登録して、何の準備もせずに面談に臨む人が多い。これが最大の失敗パターンだ。
エージェントのキャリアアドバイザーは、初回面談での印象と得られた情報量をもとに、「この人にどのレベルの求人を紹介するか」を判断する。準備なしで来た人には、準備の度合いに見合った求人しか紹介されない。これはエージェント業界の構造上の事実だ。
俺が転職活動を始めた頃、職務経歴書なしで面談に行ったことがある。「面談の中で職歴を説明すればいいだろう」と思っていた。結果、提示された求人は年収450万〜500万帯のものばかりだった。後から準備をしっかりした職務経歴書を持って同じエージェントに再訪したら、今度は580万〜680万帯の求人が出てきた。同じ自分の経歴なのに、書き方と整理の仕方だけで年収帯が変わった。



つまり、エージェントに登録する前に職務経歴書を完成させておくべき、ってことですね。



そういうことだ。準備なしで面談に行くと、エージェントが市場価値を正しく判断できない。その結果、お前に合わない求人ばかり紹介される。面談前に最低でも「技術スタック×定量的成果」の2軸で職務経歴書を仕上げておけ。
初回面談前に準備する職務経歴書の書き方
30代IT人材の職務経歴書に最低限入れるべき5要素を整理する。
- 技術スタック(習熟度・実務経験年数付き):「PHP 5年(業務)/ React 2年(業務)/ AWS 3年(設計〜運用)」のように、言語・ツールごとに実務年数と習熟レベルを添える。単なる羅列は避ける
- 担当フェーズの明示:要件定義・基本設計・詳細設計・実装・テスト・保守運用のどこを担当したかを明示する。フェーズが広いほど市場価値が上がる
- チーム規模・役割:「5人チームのバックエンドリード」「10人のSESチームでサブリーダー」など、チームの中での立ち位置を書く
- 定量的な成果:「APIレスポンスタイムを平均800msから120msに改善」「月次の障害件数をゼロに改善(3ヶ月連続)」「インフラコストを年間200万削減」など、数字で語れる成果を最低1〜2個入れる
- 転職理由のポジティブ変換:「SESの環境が嫌だった」→「プロダクト開発の上流から関わりたい、自社サービスの成長を技術で支えたい」のように、ポジティブな表現に言い換える
初回面談で必ず伝えるべき3つのこと
職務経歴書を仕上げたら、面談本番では以下の3点を必ず伝える。
- 「希望職種・技術領域」の具体的な方向性:「SES→自社開発のバックエンドに移りたい」「受託→事業会社のITエンジニアに転向したい」のように、軸ずらし転職の方向性を言語化して伝える
- 「優先順位付きの希望条件」:「年収・技術スタック・働き方・会社の規模」を1位〜5位で優先順位をつけて伝える。「全部叶えたい」だと、エージェントは何を軸に求人を探せばいいかわからなくなる
- 「転職しないという選択肢も含めた相談」という姿勢:「絶対転職する」と言い切らずに「市場の実態を知ってから判断したい」という姿勢を見せると、エージェント側も押し売りよりも本音のアドバイスをしやすくなる
SES・受託からの「軸ずらし転職」こそIT転職エージェント活用の本命
「IT転職エージェント 30代」で検索している人の本音を聞かせてくれ。「未経験からIT業界に入りたい」じゃないだろ?
SESの常駐先が毎回変わることに疲れた。受託開発でユーザーの顔が全然見えないことに息苦しさを感じている。年功序列で年収が全然上がらない。自分の技術が組織の方針で制約されている——こういった「IT業界固有の不満構造」から脱出したくて、転職を考えている人が大半じゃないか。
これを「軸ずらし転職」という。同じIT業界内で、ポジション・環境・評価制度を変える転職だ。IT特化型エージェントが真価を発揮するのは、この軸ずらし転職においてだ。



SESからの脱出を考えてるなら、まず行き先を具体的にしろ。”自社開発企業”と一口に言っても、スタートアップと大手事業会社じゃ文化も評価制度も全然違う。「自社開発なら何でもいい」は、また別の後悔に繋がる。
SES→自社開発・スタートアップへの転換
SES経験者が自社開発企業に転職する際、最も障壁になるのは「自社開発未経験」というラベルだ。しかし実態として、SESで培った「複数プロジェクトへの素早いキャッチアップ」「異なるチームや顧客との折衝」「多様な技術環境への適応力」は、自社開発企業でも高く評価される。
エージェントに依頼する際は、「SES経験者を受け入れた実績のある自社開発企業」という条件を必ず入れること。これを把握しているかどうかが、IT特化型エージェントと総合型エージェントの分かれ目だ。
スタートアップと大手事業会社はどちらがいいか。成長スピードと裁量が欲しいならスタートアップ、安定性とスケールした組織での開発を求めるなら大手事業会社。どちらも「自社開発」だが、求められるスキルや働き方は全然違う。
受託→事業会社(社内SE・IT企画)への転換
受託開発からの転換で多いのが、事業会社の社内SE・IT企画・PdMへのルートだ。受託で培った「複数システムの設計・開発経験」「プロジェクトマネジメントの素地」は、事業会社のDX推進や内製化ニーズと高い親和性がある。
このカテゴリの求人はリクルートエージェントやdodaのような総合型エージェントの方が量が多い。一方で、IT特化型エージェントにも「事業会社の内製開発チーム立ち上げ」求人が増えてきている。両方をカバーする意味でも、IT特化型+総合型の2社登録が有効だ。
受託からPdM・テックリードに転向したい場合は、「技術的な意思決定ができるPdM」という特殊なポジションを探すことになる。この条件を満たした求人を持っているエージェントは限られるため、初回面談で「技術バックグラウンドを持つPdM求人に絞って探したい」と明示的にオーダーすることが重要だ。
年収頭打ちからの脱出:評価制度を変える転職
「スキルはあるが年収が上がらない」という悩みの多くは、評価制度の問題だ。年功序列の制度では、いくらスキルを磨いても年収の上昇は緩やかにしかならない。
エージェントへの依頼時に必ず確認すべき3つの条件がある。
- 評価制度の透明性:「どうすれば年収が上がるかが明文化されているか」。評価基準が不透明な会社は、入社後も年収交渉が難しい
- 技術選定の自由度:「フレームワーク・ツール選定に現場エンジニアが関われるか」。決定権が上位職にしかない会社は、技術的な成長機会が制限されがち
- チームの自律性:「スクラムや小さなチームで意思決定の速い組織か」。階層が深い組織ほど、技術的な判断が遅くなりエンジニアの裁量が下がる
エージェントを「使いこなす」ための7ステップ行動チェックリスト
ここまでの話を踏まえて、具体的な行動手順をまとめる。エージェントに登録して「いい求人が来るのを待つ」という受動的な姿勢では、30代の転職は成功しない。能動的に動いてこそエージェントは機能する。



とりあえず登録して、いい求人が来るのを待てばいいんじゃないの?向こうから持ってきてくれるんでしょ。



そういう人に限って、1か月後に「良い求人が来ない」「担当者が連絡してこない」と言い出す。エージェントは能動的に動かないと、優先度が下がって後回しにされるぞ。
登録前〜初回面談までにやること
- STEP 1:職務経歴書を技術スタック×定量成果ベースで仕上げる(前章の5要素を参照)。A4で2〜3枚が目安。登録前に完成させておく
- STEP 2:希望条件の優先順位を明文化する。「年収:1位、開発環境(モダン技術スタック):2位、フルリモート:3位、会社の規模(50〜500人):4位」のように優先度を決めておく。全部1位はNG
- STEP 3:転職活動専用メールアドレスを作り、2〜3社に同時登録する。バラバラのタイミングで登録すると、選考の時期がずれてオファーの比較ができなくなる
エージェント活用中にやること
- STEP 4:紹介求人に必ず理由付きのフィードバックを返す。「年収レンジが希望より低い」「SES企業だった」「技術スタックが合わない」など、具体的な理由を伝えることで、次回の提案精度が上がる。「ちょっと違います」だけはNG
- STEP 5:複数エージェントの求人を横比較する。スプレッドシートを一つ作り、「会社名・年収・技術スタック・リモート可否・チーム規模・エージェント名」を記録していく。比較表があると内定後の意思決定が速くなる
- STEP 6:担当者と合わなければ早めに変更を申し出る。「担当者の技術理解が浅い」「提案の質が低い」と感じたら、遠慮なく変更を依頼する。エージェントのサービスは無料だ。遠慮する必要はない
内定後にやること
- STEP 7:内定後の条件交渉をエージェントに代行させる。年収交渉だけでなく、「入社日の調整」「試用期間の有無・長さ」「有給付与のタイミング」「リモートワークの条件」まで、条件面は全てエージェント経由で確認・交渉させる。直接企業と交渉するより、エージェント経由の方が交渉しやすい(企業側もエージェントとの関係を維持したいため)
この7ステップは、俺が転職失敗を繰り返しながら学んだことをまとめたものだ。特に重要なのはSTEP 4のフィードバックと、STEP 7の条件交渉だ。ここを疎かにする人が一番多く、そして一番後悔している。
まとめ:30代IT転職でエージェントを使いこなす3つの原則
長かったが、最後に3つの原則に絞って整理する。
- 原則1:IT特化型×総合型の2〜3社を同時に登録する。1社だけでは求人の比較も年収交渉も不完全だ。IT特化型でスペシャリスト求人を、総合型で事業会社の求人を両方カバーする
- 原則2:初回面談前に職務経歴書を仕上げておく。技術スタック(習熟度・年数付き)×定量的な成果×担当フェーズ×チーム規模×転職理由の5要素で整理する。これが紹介される求人の年収帯を決める
- 原則3:「軸ずらし転職」の方向性を言語化してエージェントに伝える。SES→自社開発、受託→事業会社など、IT業界内でのキャリアチェンジの具体的な行き先を決めておく。「何でもいい」はエージェントが動けない
「転職するかどうかまだ決まっていない」なら、それでいい。まず「自分の今の市場価値を知る」ことから始めてくれ。エージェント面談は無料だ。転職を確定させる義務はない。
俺の屍を越えてくれ。転職4回失敗した俺でも、最終的にはやりたいことができる場所に辿り着けた。準備に時間をかけた転職は、必ず結果が変わる。



転職は逃げじゃない。でも、準備なしの転職は自爆だ。今夜、職務経歴書を開いてみろ。それが最初の一歩だ。










